フジイブログ

色彩楽園主宰フジイのブログです。

すぐ目の前にいた男性は振り返って言った。
「きれいね!」

 いつものシーサイドコースをジョギングしていた。
もう慣れてきたけれど、最初の2㎞は体が重い。足が動かない。
それでもノロノロと続けていると、少しだけスピードが上がり、気持ちよくなってくる。
だからと言って、調子にのって楽しくコースを進み続けると、また疲労を感じるので、 
「もう少し行ったら、アイスクリームを食べようかな」と考えていたときだった。
 
ちょうど太陽が沈む時間。
見ると、海の上に浮かぶ雲が赤く染まっている。
これは気になる。

予定のコースを外れて、 雲を追いかけてみる。
岸壁の壁に上がりたいが、登れそうな ところがない。
と、向こうから釣り竿を持った人が岸壁の上を歩いてやってきた。
どこかから登れるにちがいない。

あ、ここだ。
ハシゴをよじ登る。
写真を撮り始めると、 すぐ前で釣りをしていた男性は振り返って言った。
「きれいね!」

見ると、反対の西側の空も美しく輝いている。
迷わず西側にも写真を撮りに行った。

「ああ、きれいだ」と感じる気持ちは教わることはできない。
 誰かに植え付けてもらうものでもない。
きれいだと感じるものに出会っただけでも嬉しくなるのに、
同じように感じている人がいることからは、嬉しさを超えて高揚感ともいえるものが湧き上がってきているのがわかる。

吸い寄せられるように出会った美しい空と、その美しさを共有して湧き上がってきたエネルギーは、この後予定を大幅に超えて、さらに3㎞わたしを走らせた。

 
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大きなくじらも、海や陸の生き物たちも、ほとんど色あせることなく、17年間LDセンターの壁やドアでたくさんの子どもたちを迎えてくれた。
移転を正式に聞いたのは、今年春になったばかりだった。 

建て替えのため、とうとう秋に取り壊しが決まったこと。

壁のくじら、看板、、、何とか形を変えて残せないものかと相談していること。
共に月日を重ねた……と心に留めてお別れした方がよいのかと悩んでいること。
センターのスタッフの方々はずいぶん頭を悩ませてくださったようだ。

くじらの誕生から17年間、毎年センターに通う子どもたちとアートを通して関わってきた。
子どもたちは、
この大きなくじらにも、
入り口を飾った看板にも、
自由なアートという、実はとても難しいテーマにも、
いつも 臆することなく立ち向かった。

もちろん、作品は大切にしたい。
大切にしなければいけない。
子どもたちの作品には命がある。

でも、命あるものはいつかなくなる。

いつかはなくなる命は、どれも尊いものだと思う。
そして、壊れたとき、また新しいものが生まれる。

壊れて、生まれて、の繰り返しがアートから生まれるエネルギーなのだろう。
くじらは立派に生ききったと思う。

くじらを描いてくれた子どもたち、
くじらをさわってくれた子どもたち、
くじらを見てくれた子どもたち、
本当にありがとう。

さよなら、くじら。

くじら2
 

大阪医科大学LDセンターが移転する。
2001年に開設し、2002年から今のセンターでずっと夏休みのおえかき大会やアート講座をお手伝いさせていただいている。 

第1回はセンターまるごとおえかき大会だった。
LDセンターはもともと古い建物で、中は少々暗く何もない壁が広がっていたので、 「子どもたちに絵を描いてもらいたい」と大阪医科大学の金泰子先生からお電話をいただいた。
これには、かなり戸惑った。
建物の壁なので、できあがった作品を一時的に展示するわけではない。
この先ずっと残るし、その中でスタッフが仕事したり、子どもたちは検査や指導を受けるわけなので、それを考慮しないといけない。
でも、色彩楽園が担当するのであれば、子どもたちが自由に描けるプログラムにしたい。
うーん・・。

金先生には、何度も念を押した。
「本当に好きにしてもいいんですね?」
先生からは迷うことなく、「もちろん、いいよー!」と明るいお返事が返ってきた。
これは、私たちも覚悟を決めなければ。 

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LDセンターは2階建なので、1階は海の中を、2階は地上を、そして突き当たりは宇宙をテーマにすることにした。
壁に大きなぬりえをつくり、自由に描けるスペースも確保した。
もちろん、ぬりえは好きな色OK!はみ出しOK!だ。
いくつものぬりえに、たっぷり絵の具、絵の具を入れる紙コップスタンド、汚してはいけない箇所の養生など準備に何日もかかったことを思い出す。

おえかき大会当日、センターの中は親子でぎゅうぎゅう。
子どもたちのアートは爆発。
みるみるうちに壁やドアは絵でいっぱいになった。
気がつくと、床いっぱいに「楽しー」という文字もあった。

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おえかき大会が終わると、暗かった建物の中は、ガラリと雰囲気が変わり、指導室のドアもすべて違う絵が誕生した。センターのスタッフに「子どもたちが自分の部屋がわかりやすくなった」と言われたことは嬉しいおまけだった。
大きなくじらは、これまでLDセンターのホームページのトップを飾ることにもなった。

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