まもなく11月というころ、愛媛県西予市へ「南予教育を考える集い」に行ってきた。

昨年7月に起きた西日本豪雨で被災した子どもたちの心のケアを7ヶ月間に渡って実施したことから御縁をいただき、子どもたちの回復過程を報告すると共に、絵による子どものケアについて紹介した。
会場となった愛媛県立歴史文化博物館はとても大きな建物で、ホールは教育関係者をはじめ、たくさんの方が席を埋めてくれた。

その中には昨年の大洲の子どもたちのケアに通ってくれたボランティアスタッフKさんや、ケアプログラムに参加してくれた学童保育のスタッフなども駆けつけてくれて、改めて子どもたちの心の足跡を辿りながら作品のメッセージを噛みしめる機会となった。

また、翌日はケア活動に毎月通ってくれたAさんも、わざわざ会いに来てくれた。
Aさんは、「被災したあのときは、本当に自分が無力なことを痛感しました。
私には何もできないと思っていたときに子どもの心のケアのお手伝いという機会をいただいて、これは行かないと!と。
毎月子どもたちと接して、私自身がほぐれていったと思います。
私の方が元気にしてもらいました」

藤井先生との出会い、子供たちとの出会い、ボランティア活動、

すべてが私を育ててくれたように思います。そしてかけがえのない体験です。」と話してくれた。
 

自然災害を体験したり、自分自身が心を解いた体験をすると思わず原点に立ち返ったり、本質を考えたりすることはあると思う。
自然の力の前には、どんな言い訳も通用しないし、その大きな力を乗り越える子どもの力に触れると、「自分もごちゃごちゃ言わないで、やりたいことはやる!」とでも言うようなエネルギーが生まれる気がする。

被災した子どものケアを続けて、「私たちが子どもを元気にするために行っていたのではなく、私たちが子どもたちに元気にしてもらってたんだ」と強く感じたのは24年前。
神戸の震災から1年ほどが経ったときだ。
子どもの限りない再生力に触れて、私たちは希望を持ち、心のエネルギーを充電してもらった。
このときのことをリプレイするようなAさんの言葉は、子どもの再生力が時間も空間も超えて確実に私たちのすぐ近くにあることを改めて感じさせてくれた。

さらにAさんは、ボランティアとして活躍しただけでなく、ご自身もアートワークで自分を見つめる時間を持ち、やりたかったことを再確認したようだった。
すると、ほどなく長い間考えていた事業を立ち上げた。
これにはびっくりしたが、8ヶ月ぶりにお会いした今回は、どんどん活動の場を広げてすっかりオーナーの風格が漂っていた。

そして、Aさんは「今日は雲海が見れますよ」と言って、車で山に連れて行ってくれた。
冬になると、木々の葉が落ちて広く見渡せるらしいが、 この日はまだまだ葉が茂っていて、見渡せはしなかった。
しかし、なんとか雲海が見える場所を見つけてくれて、生まれて初めて写真でも映像でもない雲海を見た。
大洲市は盆地で、雲海は珍しくも何ともないらしい。
Aさんにとっては、おそらく日常にあることなのに、昨年私が「雲海を見てみたい」と言ったことを覚えてくれていて、大急ぎで駆けつけてくれたようだ。
雲海を見ることができるとは思ってなかったし、思わぬサプライズだった。
これには本当に感激した。
やはり、人の気持ち以上に人の心を動かすものはない。

Aさんのアトリエ ヌートはこちら