フジイブログ

色彩楽園主宰フジイのブログです。

さよなら、くじら1

大阪医科大学LDセンターが移転する。
2001年に開設し、2002年から今のセンターでずっと夏休みのおえかき大会やアート講座をお手伝いさせていただいている。 

第1回はセンターまるごとおえかき大会だった。
LDセンターはもともと古い建物で、中は少々暗く何もない壁が広がっていたので、 「子どもたちに絵を描いてもらいたい」と大阪医科大学の金泰子先生からお電話をいただいた。
これには、かなり戸惑った。
建物の壁なので、できあがった作品を一時的に展示するわけではない。
この先ずっと残るし、その中でスタッフが仕事したり、子どもたちは検査や指導を受けるわけなので、それを考慮しないといけない。
でも、色彩楽園が担当するのであれば、子どもたちが自由に描けるプログラムにしたい。
うーん・・。

金先生には、何度も念を押した。
「本当に好きにしてもいいんですね?」
先生からは迷うことなく、「もちろん、いいよー!」と明るいお返事が返ってきた。
これは、私たちも覚悟を決めなければ。 

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LDセンターは2階建なので、1階は海の中を、2階は地上を、そして突き当たりは宇宙をテーマにすることにした。
壁に大きなぬりえをつくり、自由に描けるスペースも確保した。
もちろん、ぬりえは好きな色OK!はみ出しOK!だ。
いくつものぬりえに、たっぷり絵の具、絵の具を入れる紙コップスタンド、汚してはいけない箇所の養生など準備に何日もかかったことを思い出す。

おえかき大会当日、センターの中は親子でぎゅうぎゅう。
子どもたちのアートは爆発。
みるみるうちに壁やドアは絵でいっぱいになった。
気がつくと、床いっぱいに「楽しー」という文字もあった。

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おえかき大会が終わると、暗かった建物の中は、ガラリと雰囲気が変わり、指導室のドアもすべて違う絵が誕生した。センターのスタッフに「子どもたちが自分の部屋がわかりやすくなった」と言われたことは嬉しいおまけだった。
大きなくじらは、これまでLDセンターのホームページのトップを飾ることにもなった。

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8月のあおぞらレポート

 暑い日が続いた今年の夏。あおぞら色彩楽園の日も朝から気温が上がりました。それでも、自転車やベビーカーを押して、集まってくれた親子がありました。毎年8月は特に参加者が少ないこともあり、お父さん、お母さんにも色をぬったり、絵を描いたりすることをお勧めしています。描くことをお勧めするのは、とても良いおまけがついてくるからです(8月18日:大倉山公園)。
 


思うままに描くことCIMG0250

 好きな色を思い切りぬったり、形を描いたりすることを体験することで、それがどれだけエネルギーを必要とすることなのか、どれだけ持っている様々な力を使うことなのかを体験することができます。

 そのときに、どんな言葉をかけられると嬉しいのか、あるいはイヤな想いをするのかも改めてわかります。熱心に描いていた作品をお子さんが触ってしまったときに、思わず声を上げてしまうのは、作品がとても大切な証拠です。つまり、良くも悪くも、自分の作品に対しての誰かの言葉の重みを感じることができるのです。
 



お子さんも集中する

 お子さんが何を描くのか、どんな風に描くのか、絵の具の使い方がわかるのか、など気になることはたくさんですが、そういったことを気にしながら見ていると、なかなか子どもは集中しません。

 しかし、保護者が 描くことに集中しているとき、また、表現することで落ち着いてくると、子どもたちは安心します。安心して自分の作品に取り組み、その子にしか感じられないことを表現したり、その子にしかないアイデアを生み出したりします。

 また、保護者が自分の作品に集中し始めると、その姿からはクリエイティブなエネルギーが滲み出してきます。このエネルギーを子どもが感じることは非常に重要です。お母さんが楽しむことは、お子さんが絵を楽しむ大きなきっかけになります。 
 


描くことで心が安定するCIMG0248

 描くことは心の言葉を話すことです。心の中に抱えた様々なものを外に向かって表現することは、心のバランスを整えます。しんどいと思うこと、なんで?と思うこと、言葉にはできないモヤモヤした気持ち、あるいは、どれだけ言葉にしても足りないくらいのお子さんへの想い。こうした様々なものを色に変え、形に変えて表現することで心に余裕ができ、バランスが整います。心に余裕ができると、お子さんの表現を受け止めることも難しくはありません。
 

 あおぞら色彩楽園は、自由にアートを楽しむことでお父さんもお母さんも、お子さんも家族で元気になってほしいスペースです。 


おまけ!

今年もいただきました!

毎年8月にはアイスクリームと冷たいジュースの差し入れをいただいています。子どもたちが自由にアート楽しむ場を汗だくで支えていた

あおぞらボランティアスタッフも、パワー復活!

ありがとうございました!

7月のあおぞらレポート

CIMG0089 夏休みに入ってすぐの日曜日。開始時間にはあまり人影がなかった公園にゆっくりと子どもたちが集まってきました。
今月の「あおぞら色彩楽園」は、曇り空の下、のんびりと時が流れました。(7月21日:大倉山公園)
 
 

 参加者のほとんどが、「お友だちに聞いてきました」と口コミでの参加なのは、もう何年も変わりません。人が人を呼び、さらに人が繋がっていくことが重なって、「あおぞら色彩楽園」は続いています。絵の描き方の指導を受けられるわけでもないし、材料が準備されたワークショップがあるわけでもありませんが、参加者が減っていくことはありません。なぜなのでしょう?


 答は簡単です。楽しいからです。そして、能動的に取り組んで楽しさを体験すること、その子だけの表現を大切にすることが非常に大切だと考えているお父さん、お母さんたちがたくさんいるからです。


絵の具なんてきらいなのに!
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 先月に続いてきてくれた小学2年生のKくんのお母さんは、「絵も工作もあまり好きではなかったんです。先月来たときは、まずいろんな材料を空き箱に入れるだけだったんで、そんなの工作じゃないと言ってしまったら、スタッフの方が『これもKくんの作品ですよ』とおっしゃって。そうなのかな、と思っていたら、次々と工作に取り組み始めて、帰ってからも空き箱などで何か作っているんです!こんなこと今までなかったのに。もうびっくりして・・」。
そして、お母さ
んの驚きは続きます。この日Kくんは、受付を済ませると「あれがしたい」と絵の具を指差したのです。
これにもお母さんは「絵の具なんて絶対きらいで、保育園のころは渋々やってたのに・・。どうしたんでしょう?」と驚きを通り越して戸惑った様子でした。


どうしてきらいになるの?

 子どもの根っこは、描いたり、作ったりすることが大好きです。
でも、描き方を決めつけられたり、「これじゃダメ」と言われたとたん、絵や工作がきらいになります。
いや、きらいになるというより、自分にはできないんだ、自分はこういうことはダメなんだと想ってしまうと言った方がいいでしょう。
Kくんのように、みんな本当は好きなのですから。
特に絵や立体物は、作品を否定される、決めつけられるということは、それくらい大きな事態を招いてしまいます。


 Kくんの最初の「空き箱にいろんなものを入れただけ」は、確かに彼の「そのとき」を表した作品でした。
これまで工作をあまり楽しいと感じたことがなかったKくんはこの場に来て、きっと様々な想いを抱えていたことでしょう。
箱の中に入った「いろんなもの」はKくんの「いろんな想い」であったに違いありません。それを表現として受け取ってもらったことがKくんの大きな一歩のきっかけとなりました。


 表現がそのまま受容された時、子どもは大きく一歩を踏み出します。
想いのままに表現することの楽しさは、とてつもなく大きく、子どもの脳をいきいきとさせます。
子どもの心の表現は大人がイメージするアート作品のようなものばかりではありません。
むしろ、大人が「無駄なこと」と考えるようなものに、とても大切なことが表現されています。

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プロフィール

ふじいまさこざる

阪神大震災後の子どものこころのケアが色彩楽園の始まりです。当時出会った子どもたちは「こざるー!」と呼んでくれていました(^-^;