フジイブログ

色彩楽園主宰フジイのブログです。

2021年03月

3月のあおぞらレポート

「あおぞら」のスタートを待っていたのは
3月は毎年「あおぞら色彩楽園」の開幕の月です。
「あおぞら」は、26年前に阪神大震災で被災した子どもたちのケア活動をするために出張の「おえかきやさん」として誕生し、それ以降ずっと続いているボランティア活動です。
昨年はコロナの影響もありましたが、密を作らないよう入場制限をして、参加者の距離が保てるようにアートスペースをつくりました。
毎年、冬の間は公園でのおえかきをお休みして、画材や備品の管理をしたり、ボランティアスタッフの研修をして、春の再開に備えます。
3月は、ようやく子どもたちに会えることもあって、スタッフ全員いつも心待ちにしていますし、子どもたちも保護者の方々も「待ってたよ!」と公園に集まってくれます。
そう、3月は開幕の月です。

ところが、今年はなんと春の嵐がやってきて、前夜から雨。
「あおぞら色彩楽園」は滅多に雨が降りません。26年を振り返ってもごくわずかです。
前日に雨の予報でも当日はウソのようにしっかり晴れるし、東日本大震災後に福島県に出張した時は、特別警報が出ていたにもかかわらず、開始から30分後には雨が上がって青空が出ました。

なのに、なのに、今年の開幕は雨だったのです。

いつもなら、雨のときは屋内で開催することにしていますが、昨年からのコロナ対策のため、それもできません。
あおぞらスタッフ全員、本当に張り切っていたのに、こればかりはどうしようもありません。
泣く泣く雨のため中止のお知らせを出しました。

すると、お二人の方から「工作材料を持って行こうと思ってたんですが・・」と電話が。
お二人とも、いつも色彩楽園の活動を応援してくださっている、サポート会員です。
ようやく再開なので、工作材料を持って行けると思って楽しみにしていたと聞いて、「再開を楽しみにしていたのは参加者やスタッフだけじゃないんだ」と驚いたし、ありがたかったし、「あおぞら」を後方で支えてくださっている方々のことを改めて想いました。

しかし、驚いたのは、これだけではありません。
お昼を過ぎて、 「雨さえなければ、もうすぐ今年最初の「あおぞら」が始まっていたのに」と思っていたら、また電話が。
電話をくれたのは、おおっ!なんと、Yくん!

CIMG1352-small-378Yくんは、2歳のころから「あおぞら」に遊びに来てくれていました。
絵の具を楽しんでいた姿は今も微笑ましく、鮮やかに思い出せます。
小学生になると、ボランティアキッズとして大活躍して、スタッフはみんなとても刺激を受けました。
そんなKくんが4月から関東の大学に進むので挨拶に行きたいと思って、と言ってくれたのです。
もう嬉しくて涙が滲むような想いでした。

すっかり大人の声になっていて、 それにも驚いたけれど、Yくんが「あおぞら」のことを覚えてくれていたのは本当に嬉しく、そしてしっかりと大人の言葉使いも頼もしく、ついさっきまで感じていた、残念でやりきれない想いは、あっという間にどこかへ吹き飛びました。

「あおぞら」が雨のために中止になったことをYくんも残念がってくれました。
誰かが一緒に残念がってくれる、喜んでくれる、悲しんでくれることは、いつも心を元気にしてくれます。
Yくんは「じゃあ、夏休みに神戸に帰ってきたら遊びに行きます」と言ってくれました。
あまりに嬉しかったので、Yくんのことをすぐにスタッフたちに連絡すると、やはり、みんな大喜び!
 Yくんを知っているスタッフは、もう大学生になること、そして「あおぞら」を大切に思ってくれていることを喜んだし、知らないスタッフも2歳からきていたYくんが今も「あおぞら」のことを思ってくれていることの意味の大きさを感じてくれました。

Yくん、大学生になったらまた楽しいことがたくさん待っていると思うけど、神戸に帰ってきたときはぜひ、「あおぞら」に遊びにきてください。
スタッフみんな待ってるよ! 

アトリエのドア

外に出ても、背中を丸めずに歩ける暖かい日が続くようになりました。あちこちで少しずつ花が咲き始めて、新しい季節が始まろうとしていることを感じます。
春、特に3月は別れの季節です。子どもたちは慣れ親しんだ環境から巣立って、新しい環境について不安と期待が入り混ざった気持ちで想像を膨らませているでしょう。馴れ親しんだ場や大切な人たちとの別れは、とても寂しいものですが、その先には新しいドアが待っ
ています。

子どもたちは、このドアをいくつも開けて前に進みます。ドアを開ける力、つまり新しい世界に飛び込む、とても大きな力を持っています。そして、飛び込んで、あっという間に新しい世界を「今の世界」にしてしまいます。
春を迎えて草木がぐんぐん大きくなるように、子どもたちもまた、ぐんと成長した姿を見せてくれます。

アトリエのドア

クラスに来ていただいている方はご存知の通り、アトリエのドアにはとても古いタイプのドアノブが付いています。肘を中心にして身体に対して水平に回さないといけないものです。
アトリエが今の場所に移転したのは2004年、今から17年前、このころから10年くらいは全く気にならなかったのですが、ここ数年、このドアノブをなかなか回せない子どもが増えたように思います。
なぜなのでしょう?


いちばんの理由は、このタイプのドアノブがとても少なくなったからでしょう。つまり、子どもの生活の中に、こうした動作が必要な場面が減っていることが原因でしょう。
ユニバーサルデザインの普及により、どこのドアも誰でも開閉できるように変わっています。
また、子どもたちがアトリエに入って来て、まず手を洗う流し台の蛇口も同様です。

今はコロナウィルスの影響もあって、手をかざすだけで水がでるタイプの蛇口も非常に増えました。中には蛇口先端の吐水口に手をかざして、じっとしている子どももいます。
さすがに小学生は蛇口を回すことを知っていますが、ドアノブと同様、「ひねる」動作がスムーズでない子どもは増えたように思います。

しかし、発達障害をもつ子どもの中にはドアノブを回すような動き、つまり急須でお茶を入れるとか、料理をお皿に移す時にフライパンを傾けるような動きが苦手な子もいますので、単に経験不足だけが理由ではないことも確かです。

過去にはドアノブを取り替えることも考えたこともありますが、今はすっかり少なくなった、この動きを経験する機会をわざわざ奪うこともないと思って、そのままにしていますし、ドアは幸いガラス戸なので、ドアノブを一生懸命動かそうとしている子たちには、まずは中から「回してごらん」と声をかけています。


お父さん、お母さん方、一度アトリエのドアを開ける子どもたちの動きをじっくり見てみてください。
もし、経験不足からくるものであれば、この動きを経験できるチャンスと捉えて、ぜひ、ノブを回すことにトライさせてあげて欲しいと思っています。
ノブをひねる動作は、大きく分ければ細かいコントロールです。様々な種類の動きをたくさん経験することが動きに関する神経の道をたくさん作ることにつながり、道がたくさんあるほど細かいコントロールが滑らかになっていきます。


子どもはいくつものドアを自分で開けて、自分の道を前に進みます。
アトリエのドアも子どもたちの多くは、いずれ自分でドアを開けるでしょう。経験を積んで「できるようになる」ことも新しい世界です。

経験したことのない楽しさや喜び、ワクワク、充実感や達成感がいっぱいの新しい世界が子どもたちを待っています。 

fullsizeoutput_e9
 
ギャラリー
  • くますけものがたり2〜くますけが被災地に!
  • くますけものがたり2〜くますけが被災地に!
  • くますけものがたり2〜くますけが被災地に!
  • くますけものがたり2〜くますけが被災地に!
  • くますけものがたり2〜くますけが被災地に!
  • 9月のあおぞらレポート
  • くますけものがたり1〜くますけ誕生秘話
  • くますけものがたり1〜くますけ誕生秘話
  • 8月のあおぞらレポート
プロフィール

ふじいまさこざる

阪神大震災後の子どものこころのケアが色彩楽園の始まりです。当時出会った子どもたちは「こざるー!」と呼んでくれていました(^-^;