夏休みも終わり、秋風が吹き始めて、中学3年生たちは受験が近づいて来ていることを感じ始めているようです。
受験生に限らず、2学期が始まってすぐは、なんだかしんどいと感じている子もちらほらいます。
疲労を感じているようなときは、「つくる」、「生み出す」パワーも小さくなり、「なんだか楽しくない」ともなりがちで、「なにしようかな」と考える時間も長くなります。
こんなとき、時々誘ってみるのは、「壊すこと」です。
壊れてしまった電化製品などを「壊していいよ」と見せると、「いいの?」と戸惑いながらも、ちょっぴり眼に力が戻って来ます。
そして、数種類のドライバーを渡すと、「壊してもいいんだ」と確信を持ちます。
「壊すこと」は、子どものコンディションにより、声をかけるのですが、「壊すもの」がないと壊せません。
そこで、色彩楽園メンバーの方々に不要の電化製品をお願いしたところ、多くのご協力をいただき、音楽コンポやビデオデッキなどさまざまなものが集まりました。
子どもたちを見ていると、「なんだかしんどい」とき、つまり、何かが詰まったようにエネルギーが少々ダウンしているときなどは、ドライバーを使ってていねいに分解し始めます。
一方、「あー!もう!」と大きな声で言いたくなるような、負のエネルギーを放出したいようなときは、金づちなどで破壊する、とにかく、何でもいいから次々と破壊することが多いような気がします。
こちらはスポーツなど思い切り身体を動かすことで発散することにも似ているようです。
さて、道具を使ってていねいに分解し始めると、徐々にエネルギーが高まっていくのが感じられます。まさに、高い集中力で取り組み、少しずつ部品を取り出すことに夢中になって、「こんなん出てきた!」、「見て!こんな風になってる!」と弾んだ声が聞こえ始めます。
プリンターを分解していた中学3年生のMくんは、インクが残ったチューブを不用意に切ってしまわないように、慎重に切断する場所を見定めていました。それは、まるで外科医のようでもありました。
破壊しつくすと、まるで険しい山道を登って山頂に立ったような、充足感に満ちた表情が浮かびます。そして、すっきりした表情で「さようなら!」と去っていきます。
集中する、夢中になる時間を持つことが子どもを元気にすると感じる瞬間ですし、その回復力にも驚かされます。
また、分解した部品は他の子どもが作品の材料として、「再生」させてくれることもあります。
電化製品の中から出てきた「新しいもの」がクリエイティブなエネルギーを刺激してくれるのでしょう。
十分に破壊しつくした子どもたちは、新しい作品に取り組んだり、滞っていた作品に再び取り組み始めたりし始めます。
壊すことでつくりたくなる、破壊することは新しい創造エネルギーも産みます。
破壊することと創造することは表裏一体なんだと思わずにはいられません。
さらに、子どもたちが元気を取り戻して再び歩き始める姿を見ると、「アトリエ」という空間だけが子どもを元気にするのではなく、色彩楽園につながる方々のお支えが大きいことを感じます。
ご協力いただいたみなさま、ありがとうございました。今後ももし、不要な電化製品がありましたら、お声がけください。