フジイブログ

色彩楽園主宰フジイのブログです。

2023年05月

春、エネルギーの高まりを感じて

fullsizeoutput_480 春休みももうすぐ終わりというある日のアトリエに集まった子どもたち、新学期のスタートを目前に控えて、それぞれにドキドキを抱えていたようでした。
子もたちの口から聞かれたのは、「あー、やだなー、明日から学校始まるー」、「月曜日になったら2年生」など、緊張と不安の中にも楽しみや新しい日々への期待も混ざり合っていて、「やだなー」という言葉の中にも高まるエネルギーが溢れているようでした。


 4月は一年の中で最も気持ちは激しく揺れるときです。進級したり、入学したりして逸る気持ちもあふれ出てくるし、学校を休みがちな子どもたちも、やはりはりきりモードになって登校したりもします。
新しい学年、つまり新しい環境への期待も大きく、がんばりたい気持ちが高まります。


 このように緊張も高く、がんばりすぎてしまいがちな4~5月には、作品が手につかない時があったり、とにかくダンボール紙を切ることに没頭したりする姿が見られます。
4月の「あおぞら」でも、とにかく絵の具をぬりつくした形のない作品があちこちにありました。


 こうした、絵の具の色すべてを混ぜ合わせ、それをぬりつけただけのような「形のない」作品を見ると、ほっとします。

 なぜなら、4月の子どもたちの心の中には緊張と不安、期待と楽しみ、疑問や不満、学年が上がって成長を感じる誇らしい気持ちなどなど、実にたくさんの様々な感情が入り混じっていて、「今、こんな気持ち」などと一言で表現できるものではありません。
色は感情と強い結びつきがありますから、心に抱えた様々な感情を絵の具やクレヨンで外に出すと、それはさまざまな色になります。それらの色がすべて混ざり合わさっているということは、様々な感情が混ざり合わさっている混沌とした状態とも言えます。


 子どもがたくさんの色を混ぜ合わせて暗く鈍い色に夢中になるときは、何か苦しいものを抱えているときです。しかし、同時にこれは、がんばっている証拠でもあります。
たくさんの色が混ざりあったパレットを見ると、「がんばってるね!」と思わずにはいられません。
また、その苦しい気持ちを少しでも吐き出せたことにほっとするのです。

 4~5月は形のない作品で思う存分言葉にできない気持ちを外に出してもらいたいと思っています。

4月のあおぞらレポート

 屋外ではマスクのない人たちが少しずつ増える中、ぽかぽかと暖かい公園に子どもたちが集まりました(4月16日 大倉山公園)。

 ここのところ、増えているのが2~4歳くらいの小さな子どもたちです。絵の具で遊ぶのも、ねんどをこねるのも、特にお父さんたちがにこにこして見守りながら懸命に手伝ってくださっています。
20年くらい前は体のない人の絵を見て「なんや!これは!」と怒りが混じった声をあげるお父さんもいらっしゃましたが、そんな声ももうすっかり聞かなくなりました。

 中でも画用紙を黒くぬりつくしていた女の子は、お父さんのアシストが素晴らしく、黒の中に他の色も入れて、おそらくこの時に出したかったであろう色をすべて出し切りました。
出し切った後、お父さんは「すごく楽しかったみたいです」と話してくださいました。
お父さんの素晴らしいアシストは、あおぞらスタッフのほとんどが気づいていました。

子どもの絵の中に暗いトーンの色が出てくると、つい「そんなに絵の具を混ぜないで」や、「そんな色じゃなくてもっときれいな色を使って」と言ってしまう大人は少なくありません。
ダークトーンの色はきれいじゃないのでしょうか。
そう言ってしまう大人たちはダークトーンの服を着ないのでしょうか。
体験したことや、見たものは絵によく現れますが、それらの中にはダークトーンはないのでしょうか。

パレットや筆洗の水の中に次々と絵の具を入れて、色が変わったり、変わらなかったりする絵の具は子どもたちの好奇心や知的欲求を刺激します。
不思議に感じる心、疑問に思う気持ちは様々な能力の土台となります。
絵を描いたり、色をつくったり、立体物をつくることは単にアート作品を生み出すだけではなく、その過程に実に多くの脳と心への刺激があります。
たくさんの色を混ぜると、当然絵の具は暗いトーンになりますが、その色には子どもたちの多くの発見やトライ、気づきが含まれ、それに加えて様々な感情も含まれています。
黒っぽい色の中に隠れているたくさんの色は、子どもたちが心に抱えているたくさんの感情や欲求などが象徴されているからです。

特に4〜5月は環境が大きく変わり、子どもも大人も、良くも悪くもちょっぴり落ち着きません。
一年のうちで最も多くの感情を抱えてしまう季節かもしれません。
しかし、次々と絵の具を混ぜることで、抱えている様々な感情などを外に出すと、心は少し軽くなります。
心が軽くなると、なんだかすっきりして次に描く絵はまったく違う色が現れます。
色が変わるだけでなく、形が現れることもしばしばです。

子どもたちのダークトーンには、心のメッセージが詰まっています。
表現したいものを思い切り表現できるようにアシストしてくださっているお父さん、お母さんは本当に増えました。
あおぞら色彩楽園に遊びに来てくれた子どもたちの心が少しでも軽くなり、元気になって、帰路についてもらうことは、何よりの願いです。

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ギャラリー
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プロフィール

ふじいまさこざる

阪神大震災後の子どものこころのケアが色彩楽園の始まりです。当時出会った子どもたちは「こざるー!」と呼んでくれていました(^-^;