フジイブログ

色彩楽園主宰フジイのブログです。

2023年06月

マスクがなくなって見えるもの

ここのところ、梅雨は一休みのようです。
あまりに雨が続いて外で遊べなくなると、子どもの運動欲求が十分に満たされず、ちょっぴり心配にもなりますが、子どもたちは新しい環境に慣れてきているようですし、神戸市の小学校は6月最初の土曜日に運動会も終わって、ちょっと一息ついているようです。

新型コロナウィルス感染症は先月5類感染症となり、マスクをつけていない人が徐々に増えています。
アトリエでも、この3年間で来てくれるようになった子どもたち、保護者の方々のお顔をようやく拝見できるようになって、ご家族をより近く感じるようになりました。

人の顔が半分しかわからないことは、やはり、その姿形や、その人が醸し出す空気から認識できること、伝わってくることなどが、かなり減ってしまっていたことをこの1ヶ月は感じています。
子どもたちの表情がはっきりわかると、作品を通して共に感じることも増えます。

例えば、絵の具を混ぜて色が変わったことに息を飲む瞬間の表情にこちらも息を飲みそうになるし、トライしたみたことが成功したときの輝く表情には大きなパワーをもらいます。

つまり、作品を通して共に感じることが増えると、作品が発するメッセージはより大きくなるし、子どもたちの作品をより深く聴くことができるのだと改めて感じています。

しかし、一方でマスクをつける機会が減った影響もあってか、子どもの感染症が増えています。
マスクだけではなく、3年以上も衛生面のルールが増えて清潔にしすぎたことは、免疫力の低下にもつながっているのでは、とも言われています。

この3年間にかからなかった感染症にかかるようになったということは、マスクは子どもたちを守ってくれていたとも言えそうですが、もし、免疫力の低下を招いているとすれば、長い目で見たときには「守ってくれていた」とは言えないかもしれません。

小さいうちにある程度感染症に罹患することは、ある意味で必要なことだとも言えるかもしれません。
子どもが経験する様々な多くの経験も同じでしょう。
失敗したり、壁にぶつかったり、悲しい思いをしたり、自信をなくしたりすることから避けて通ることはできません。マスクをつけるように、こうした経験を遮ることはできません。
「自信をなくすと困るから」あえてチャレンジさせないのではなく、「自信をなくしてしまったけれど、また闘志を燃やしています」というような回復力がとても大切です。
そして、子どもたちの作品を聴いていると、どの子どもにも回復力が備わっていることを感じます。

アトリエでまず子どもたちに最初に伝えるのは「失敗OK!」です。
失敗するのがイヤだからトライしないのではなく、やってみたいことをやってみよう、もし、失敗したら一緒に考えて、またトライしてみようということです。
失敗はとても大きな体験なのです。

新型コロナウィルス感染症を予防するためには、マスクを着けて生活することはやむを得ませんでした。
これからは、マスクを着けない場面が増えて、子どもたちに様々な体験が戻るでしょう。
感染症にかかってしまうこともあるかもしれませんが、それによりまた一つ強くなるでしょう。
3年3ヶ月の時が過ぎ、子どもたちの表情が見えることの嬉しさを噛み締めています。

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5月のあおぞらレポート

すっきりと晴れて、萌えるような新緑が美しい5月。
あおぞら色彩楽園には受付開始前から長い行列ができました(5月21日:大倉山公園)。


この日の人気も、やはり絵の具でした。
いつも公園の「あおぞらギャラリー」には、子どもたちの作品がずらりと並んで実に壮観ですが、あおぞらスタッフによると、「今日は絵の具の量に比べると作品が少なかったように思います」とのことでした。

実際、絵の具ボトルは、どの色もすっかり空っぽになっていましたが、ギャラリーはすべて埋まってはいませんでした。
このように、絵の具は使うけれども画用紙に描いた作品は少ないことは一年に一度か二度かあります。

なぜなのでしょう?

5月から6月にかけて、環境が新しくなった4月の緊張や、がんばりすぎた疲れを表現する子どもはたくさんいます。
絵の具をとにかく出して混ぜるだけや、ねんども形にならなかったり、絵の具やねんどなどさわると気持ち良いものをさわり続けているだけで画用紙は真っ白なままだったりも珍しくはありません。
心の中に疲労が積もってしまっているときは、作品を生み出すエネルギーや描きたい意欲など、もともと持っているパワーもどうしてもダウンしてしまいます。
何かを生み出すよりも、まずは生み出すためのエネルギーを取り戻すことが必要なときです。
そのためには、まず心の中に抱えた苦しいもの、つまり疲労を外に放り出すことが必要です。
「苦しいもの」は、
往々にして形になりません。

色が混ざり合って、鈍く、暗くなって、ぐちゃぐちゃです。
だからこそ、心に抱えたままにしておくことは、とても心配で、外に出すことができればホッとします。

もし、「苦しいもの」を心の中に抱えたままにしていたらどうでしょう?
それは、どんどん積もって、心のバランスを崩す原因となってしまうでしょう。
心のバランスが崩れているとき、疲れているとき、私たちは誰も持っている力を発揮することはできません。
あおぞらギャラリーに並ぶ作品が少なくなっていたとしても、集まってくれた子どもたちが少しでも「苦しいもの」を吐き出してくれていれば、こんなに嬉しいことはありません。

fullsizeoutput_4c3そして、何より、「苦しいもの」を吐き出す力を持っている子どもたちのエネルギーの大きさを感じます。
それはまるで、生命力のかたまりのようなフレッシュな緑色のようです。
子どもたちは新しい環境も、グレードアップした課題も、この大きなエネルイーでチャレンジして乗り越えて行きます。
「あおぞら」は、いつもみんなを応援しています!

ギャラリー
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プロフィール

ふじいまさこざる

阪神大震災後の子どものこころのケアが色彩楽園の始まりです。当時出会った子どもたちは「こざるー!」と呼んでくれていました(^-^;