フジイブログ

色彩楽園主宰フジイのブログです。

2023年11月

いたずらしたい!

少しずつ空気が冷たくなってきました。
色づいた木々が眼を楽しませてくれる季節です。
以前「思い切り体を動かす!すっきり!」で10月のアトリエでKくんとNくんが汗だくになるまで体を動かした後、びっくりするほど絵を描くことに集中したことをご紹介しました。
その続編です。

11月のアトリエにやってきた二人はこの日も顔をあわせると、お互いに嬉しそうでした。
それぞれに材料を選んだり、立体物を作ったりしていましたが、やはり体を使って二人で暴れたい様子です。
<戦いは廊下でやろう>と声をかけると、途端に二人とも困った表情を見せました。
「だって廊下だったら、また怒られるもん」。
「うるさいって言われた」。
「声を出さないなんて絶対無理!」。

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それでも何か悪さをしたくてたまらない様子のKくんとNくん。
まずはNくんが「はい、マグロのお寿司です」とわたしに持ってきてくれました。
口に入れる(ふりをする)と、「はい!わさびです!」とマグロの下に入れたワサビ(フェルト:黄緑色)を見せ、Kくんと一緒にゲラゲラ笑っています。
その後も二人はヒソヒソとなにやら相談しながら次々とワサビ入りのお寿司やワサビドリンクなどをわたしに持ってきてはゲラゲラ笑い転げていました。

二人は共謀することが楽しく、わたしを「いじめる」ことが楽しく、材料の中からお寿司のネタに見立てられるものを見つけることが楽しく、次々とアイデアが湧き出て、それを形にすることも楽しいようでした。
次々とアイデアが出てくる時は楽しいし、楽しさを感じている時は次々とアイデアが湧き出てきます。

子どもたちがちょっとした悪さをしたがるときは何か苦しいものを抱えていることが多いようです。
関心がほしいというときでもあるでしょう。
ですから、ターゲットになるのは必ずスタッフです。
ワサビという子どもには辛い、イヤなものをつくって食べさせることで苦しいものを外に出したわけですが、この「いじめ」は決して陰湿なものではありません。「だます」ための工夫をこらして、わたしが驚いたり困ったりする様子を見て「やったー!」と喜ぶかわいいものだし、何よりしかけはバレバレです。
これまで、食べ物を作って持ってきてくれて、食べると、「それ、毒なのに!」と嬉しそうに言う子にもたくさん出会いました。
ワサビと毒は同じような意味を持つと思います。
抱えた苦しさを目に見える形、つまり「ワサビ」にしたのです。

これは前回廊下で暴れて「叱られたから」だけではなく彼らの工夫もあり、また、続いていた学校行事も終わるなど、子どもたちのコンディションが再び落ち着いてきたことが大きな理由ではないかと思っています。
とにかく暴れないと苦しさが外に出せないときは、何が苦しいのか、なかなか言葉にも絵にも色にもなりません。
こうしたときは、ついつい大人が困ってしまうような行動になりがちで、叱られることも多く、苦しさを出し切ることが難しくなって、さらに苦しさを抱えてしまうという悪循環も生んでしまいます。

しかし、苦しいものを様々な方法で外に出して心のバランスを取り戻すと、子どもたちは持っている力を発揮した作品を生み出してくれるし、お互いに実に楽しく関わります。
散々いたずらを繰り返して、最後の方でNくんがネタばらしをしたときもKくんには「もー、言うなよーー」と穏やかで余裕がありました。
KくんとNくんには共謀して一体感を感じるという楽しさもあったでしょう。

子どもたちはいつも目の前の壁に立ち向かっています。
苦しいとき、心のバランスが崩れてしまうことはありますが、自らバランスを取り戻す力をどの子どもも持っています。
バランスを取り戻したとき、子どものパワーはよりいっそう大きくなっています。

10月のあおぞらレポート

fullsizeoutput_583気候の良い10月、大倉山公園は絵の具やねんど、空き箱を楽しむ子どもたちが集まり、穏やかな光景が広がりました。
絵の具のパレットとして使っている食品トレイの差し入れもどっさりいただきました。ありがとうございました!

スポーツに、読書に、アートにと、様々な活動を楽しむのにぴったりな季節ですが、行事の多い2学期です。11月の初め頃までは少々疲労を見せる子どももいます。
疲労を抱えているときは、絵も工作もなかなか形にならなかったり、たくさんの色が混ざり合って混沌としていたり、また、座って集中するよりもとにかく体を動かすことで発散したり、作品が子どもの心のコンディションを語ってくれます。

こうしたときは、いつまでもねんどをこねていたり、手にたっぷりの絵の具をつけてヌルヌルする感触に浸ったりして、数え切れないくらいたくさんの手形が登場することも少なくありません。
「なんかしんどいなー」、「助けてほしいなー」という心のメッセージでもあります。

fullsizeoutput_65b作品に疲労が現れると少々心配になりますが、成長していく上では様々な壁を感じたり、疲労を抱えたりすることは、ごく自然なことです。
子どもたちの素晴らしいところは、そうした心の疲労を外に出すパワーです。
画用紙の上や、また、立体物で疲労を語ることは、実に素晴らしい子どもの生きる力です。
ですから、疲労を感じる表現が現れると、「よく出せたね!」、「こんなにしんどいのに、がんばったんだね!」と、その子を抱きしめたくなるほど嬉しく、そして、そのパワーに敬服せずにはいらfullsizeoutput_65dれません。
表現したものが身近な大人に受け止められると、抱えた疲労は減り、崩れていた心のバランスを取り戻します。

心のバランスを取り戻した後は、その子が本来もっている力が発揮できる状態に近づきます。
あおぞら色彩楽園でも、絵の具を思い切りぶちまけて元気が戻ってくると、スタートしたときとは違う色であふれかえります。
いつのまにか工作シートの上は子どもとそのファミリーでいっぱいになって、理論立てて考えたい、表現したいコンディションが整ってきたこともうかがえます。

11月のあおぞら色彩楽園は今年最後の公園での開催です。
子どもたちも元気を取り戻してきています。
ちょっぴり寒くなるかもしれませんが、子どもたちのパワーで暖かいアートスペースになると思っています。

思い切り体を動かす!すっきり!

fullsizeoutput_59311月は暖かい、いや暑いと言えるほどの気温の日々でスタートしました。
この時期は運動会や音楽会など学校の行事も多く、子どもたちは忙しい季節。
アトリエで少々疲労を見せる子もいます。

ある日のKくんはNくんがやってくるのを心待ちにしていました。
二人とも作品に取り組む集中力は非常に高いものを見せますが、少々疲れているときなどは二人で悪さをしながら遊びます。
二人で結託してわたしをいじめたり、作った人形や戦車で戦ったりするのが楽しくて仕方がないようです。
Nくんが少し遅れてアトリエに入ってくると、「おう!」とお互いに嬉しそうでした。

この日は、それぞれに作品に取り組んだ後、二人そろってやってきて、「あれ、ある?この前戦いで使ったやつ」。
二人は前回のアトリエで細長いウレタンを剣に見立てて戦い合う、いわゆる「チャンバラごっこ」に夢中になりました。その時に使ったウレタンのことです。

体を動かす遊びを見ていると、体のコントロールの仕方、運動遊びの経験量、ルールの理解や相手への気配り、正々堂々とした姿勢など、様々なことが見えます。
また、疲労を抱えているときに思い切り体を動かして発散することも、とても大切です。
前回汗だくで戦い合ったときも、戦い終わって部屋の中に戻ってくると、二人ともさっきまでの激しさが嘘のように鳴りを潜めて静かになり、絵を描くことに集中しました。
体を思い切り動かしたことで、すっきりしたのでしょう。
子どもは運動欲求が高く、いつでも座ってじっとしていられるわけではありません。
しかし、今のアトリエは環境的に思い切り暴れてもらいづらいことが残念なところです。

そして、前回に続いてのチャンバラごっこは向かい合った二人に「狙うのは首から下だけ、後ろからの攻撃はダメ、泣いてもいい」とルールを説明して始まりました。
これはアトリエで28年間続いている、戦いのルールです。
KくんもNくんも前回に続いて汗だくで戦い合っていましたが、チャンバラごっこはいつのまにかゴルフになり、ホッケーになり、果てには大声をあげながら飛び上がってダンボール箱の「敵」をたたきつぶすという遊びに変化していきました。
声が大きかったので、さすがに最後にはお隣さんから叱られるというおまけ付きでしたが・・・。

fullsizeoutput_64b思い切り体を動かすこと、誰かと一緒に「やりたいこと」を共有することなどは、とても大切なことです。
もちろん、おまけの「知らない人に叱られること」も、とても大事な経験です。
こうした経験を重ねながら、子どもたちは社会のルールやマナーを身につけていきます。
次のアトリエでは二人とも叱れないように何か工夫して、やりたいことに取り組むと思います。
体を動かすこと、アートを楽しむことに絶好の季節です。
お休みの日には、ぜひご家族で汗を流してリフレッシュしてください。
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プロフィール

ふじいまさこざる

阪神大震災後の子どものこころのケアが色彩楽園の始まりです。当時出会った子どもたちは「こざるー!」と呼んでくれていました(^-^;