雨の季節が近づいています。新学期が始まって2ヶ月近く、元気に登校している子どもたちにも少し疲れが見え始めました。
子どものアートクラスには平日の午後の早い時間のクラスがあります。
学校に行っていない、行きたいけれど行けない子どもたちに、ぜひ来てほしいと思って10年ほど前に開設しました。
このクラスは、これまで多くの子どもたちで賑わったことはありません。
それどころか、登録している子がすっかりいなくなって、からっぽになってしまうことがしばしばです。
なぜなら、来てくれていた子どもが何か好きなことをみつけたり、学校に通い始めたりするからです。
月に2回、一年ほど通ってくれると、アトリエを卒業したり、週末のクラスに移ったりします。
学校に行っていない、あるいは欠席がちな子どもを対象にしていますが、決して、また登校できるようになることを目標にしているわけではありません。
他のアートクラスと同じで、安心で安全な場所があること、つまり、「どうしたらいいかわからない」、「何もやりたくない」、「なんだかわからないけれど苦しい」などの気持ちも表現していい、そしてそれらをちゃんと聞いてくれる場所なんだと子どもたちが感じてくれることを目指しています。
心の中に積もった苦しいものは、この信頼関係がなくては表現されることはありません。子どもの心の中に積もったままです。
子どもたちが登校するようになる理由は子どもによりさまざまですし、はっきりさせることは困難です。
何年か先に理由がわかることはあるかもしれませんが、苦しんでいる最中は明確にならないことがほとんどでしょう。
ただ、共通していることは、元気な時も元気がない時も、どんな形であれ、段階を踏んで苦しさを表現してくれる状態になることです。
特に疲れている時は絵でも立体物でもなかなか形にならなかったり、取り組み始めても手がとまってしまったりすることもあります。また、あまりにも疲れ過ぎているときは、ぼんやりしたまま何もしない時間があることもあります。
保護者は「なんだか元気がないから、アトリエで好きな時間を過ごして元気を取り戻してほしい」と思うことも多いようですが、心底疲れている時は色鉛筆を手にすることすらできません。
画材を手に取ることもできないほどの疲労があることが積極的にOKされることが必要です。
外に表現されるものばかりでなく、表現されない、表現できないものを大切にすることがとても重要です。
そして6月からまた、クラスはからっぽになりました。
このクラスだけは、からっぽになるとホッとしたような、安心したような気持ちになって、「本人もご家族も本当によくがんばった、すごい!」と思います。
6月は元気に登校している子どもたちも疲労が見える時期です。
アトリエでは疲労を表現してもらいたいし、安心して「作りたいものがない!」と言ってもらいたいと思っています。