フジイブログ

色彩楽園主宰フジイのブログです。

子どものアート

4月のあおぞらレポート

春は雨が多い季節ですが、まさか2ヶ月続けて「あおぞら」が屋内開催になるとは思ってもいませんでした。
「あおぞら」を開催する第3日曜日は、これまで本当に雨が少なく、雨の予報が出ていても、なんとか夕方まで降らずに済んだりすることがほとんどでした。
しかし、3月のレポートでもご紹介した通り、今は神戸真生塾の体育館をお借りできるので、残念な気持ちも半分くらいです。

晴れていても雨が降っても、子どもたちはとても大きなパワーを見せてくれます。
あおぞらスタッフお手製のお絵かきボードに貼られた半切サイズの画用紙に立ち向かう子どもは多く、ダイナミックで元気いっぱいの線が現れることもありますし、たくさんの色を絞り出したり、混ぜたりして大きな画面をぬりつくす子どももいます。
3歳のYちゃんは、トレイに絵の具を入れることにも集中しながら、この半切サイズの画用紙4枚の作品を描き上げました。集中した時間は実に90分あまりです。
割合から言うと、彼女の体の大きさからすれば、この画用紙の大きさは大人であれば畳2畳分くらいはあるでしょう。
小さな手に大きなハケを持っている姿は、まるで私たちがホウキを持っているかのようです。
それほど大きな画用紙を前にダナミックに絵の具をぶつけて、しかも4枚も集中して描き上げるパワーの大きさは、もう想像することすらできないくらいの大きく、エネルギーの高さは子どもならではです。
実際にYちゃんは4枚目の作品の途中からあくびがとまらず、持っている力を使い切ったようでした。
それでもハケを持つ手を止めず、「できた」と自分で思うまで絵の具と向き合いました。

CIMG9915もちろん、手頃なサイズに集中して絵を描く、色をぬる子どもたちも持っている力を十分に発揮して、大きなパワーを見せてくれます。
Yちゃんの大きな作品は、そのパワーがどれだけ大きいかがよくわかる一例です。

気がつけば眠り込んでしまうギリギリまで遊びきって、パワーを放出することができるのが子どもが持つ生命力の大きさです。
毎日のように新しい体験があるのが子どもの日常です。
それでも、子どもたちは大きなパワーでその壁を超えていきます。

大人が考える小さな世界に子どもたちを閉じ込めてしまわないように、そして力を使い切って帰ってきた時には安心して休めるようにすることが大人の大事な役割ではないかと思っています。
(写真と本文は関係ありません)

9月のあおぞらレポート

ようやく暑さも和らいできた3連休の中日、9月のあおぞら色彩楽園を開催しました(9月17日 大倉山公園)
この日は開始前にも受付に長い列はできず、いつもより少ない人数で、終始穏やかなアートスペースになりました。
そんなのんびりムードの中、2時間の間休みなく一つの立体物に取り組んでいた男の子がいました。
ペットボトルのキャップが転がるように、坂道にしたコースを作り、何度もキャップを転がして、着地する場所を研究していました。
コースの長さや角度を変えると、キャップの着地地点は変わります。
また、キャップが転がるスピードも変わり、大きく跳ねたり、跳ねなかったりします。
その男の子は、何度も繰り返しコースの角度などを変えて、思う場所にキャップが入るように考えていました。

fullsizeoutput_581色を使った表現が感情を表すことに深いつながりがあることに対して、工作は論理的な思考を必要とします。
左脳が働き、文字や言葉から認識し、論理的に考える・分析する力や継時的な処理をすることにも関わります。
文字を書いたり、計算したりすることは左脳の働きですし、、アートに関して言えば、観察力や写実的な表現に関係します。
キャップのコースをあれこれ考えていた男の子のように、コースの長さや角度を変えて、実験を繰り返すことは数学的なセンスを磨いているとも言えるでしょう。
ですから、工作に取り組むこと、しくみなどを考えることは単に作りたいものを形にしているだけではなく、様々な力を育てています。
ここに、作ろうとしているものとそっくりに作ることだけが、子どもがアートに取り組むことの意義ではない理由の一つがあります。

そう、「表現すること」は、平面の作品であれ、立体の作品であれ、子どもの様々な力を育てます。
子どもたちが自発的に描いたり作ったりすることで、楽しさを感じながら力を育てていることは言うまでもありません。
しかも、描きたくて描く、作りたくて作っているときには吸収するスピードも早く、高いレベルにチャレンジする意欲も十分です。

fullsizeoutput_578いやいやながら歴史の年号を覚えようとしても、なかなか覚えられませんが、大切な人の誕生日はすぐに覚えますね。
それと同じで、作りたくてつくっているときの子どもは、応用すること、関係性を理解することなどのスピードも早く、自らグングン力を伸ばします。
作品が完成した時の充実感もひとしおです。

しかし、子どもたちが「やってみたいこと」は、誰もが「すごい!」と声を上げるような作品ばかりではありません。
組み合わせた空き箱のパッケージが見えなくなるまでテープを貼りつくしたい、ありったけのトイレットペーパーの芯を全部つなぎたい、大きな画用紙全部をぬりつくしたい、などなど、チャレンジは実に様々です。
それらを自分で「やってみること」には、とても大きな意味があります。

季節は秋。
本を読むにも、スポーツやアートを楽しむにも良い季節です。
子どもたちには、それぞれのやってみたいことに、いっそうチャレンジしてほしいと思っています。

4月のあおぞらレポート

3月のあおぞらは中止になったので、ようやく公園での開催となりました。
あおぞらスタッフも、もうウズウズしながら待ちに待った今年初開催です。
アートを楽しむには絶好のお天気で、受付がスタートすると、5ヶ月ぶりの開催を心待ちにしてくれていた多くの方々が集まってきました。春になり、外に出かける気分も高まったのか、公園に遊びに来ていた親子の飛び入り参加もあって、子どもたちは大きな画用紙やハケなどに目を輝かせて、和やかなムードが公園を包みました。
 

fullsizeoutput_28aそんな中、おねえちゃんと一緒に参加してくれた4歳のYくんは、自分と同じくらいの背の高さのおえかきボードの前で実に楽しそうでした。のびやかに大きく一筆入れると、カッコよくくるっとターンしてにこやかに充実した表情を見せてくれて、楽しくてたまらない、最高に気持ちいいと感じている様子が伝わってきました。
すぐ向かいにいたおねえちゃんも手形をペタペタ押した後、両手に筆を持ち、Yくんと同様大きなアクションで、まるで踊るように描いていました。
おねえちゃんとYくん、どちらが先に踊り始めたかはわかりませんが・・。 

感じたことを描かずにいられない、思わず踊ってしまう、歌ってしまう、私たち人間が積み上げて来たアートの歴史は、こうした「表現せずにはいられない」もののつながりだと思います。
立体物をつくりながら思わず口をついて歌が出て来たり、踊るように描く子どもはたくさんいます。

子どもたちこそ、真のアーティスト!

太刀打ちできませんね。

Yくんとおねえちゃんが感じている楽しさ、嬉しさ、気持ち良さは周囲の空気までをも明るいピンク色にしていたようでした。
大きな作品はもちろん、まさに彼ら自身がアートでした!
 

さよなら、くじら2

大きなくじらも、海や陸の生き物たちも、ほとんど色あせることなく、17年間LDセンターの壁やドアでたくさんの子どもたちを迎えてくれた。
移転を正式に聞いたのは、今年春になったばかりだった。 

建て替えのため、とうとう秋に取り壊しが決まったこと。

壁のくじら、看板、、、何とか形を変えて残せないものかと相談していること。
共に月日を重ねた……と心に留めてお別れした方がよいのかと悩んでいること。
センターのスタッフの方々はずいぶん頭を悩ませてくださったようだ。

くじらの誕生から17年間、毎年センターに通う子どもたちとアートを通して関わってきた。
子どもたちは、
この大きなくじらにも、
入り口を飾った看板にも、
自由なアートという、実はとても難しいテーマにも、
いつも 臆することなく立ち向かった。

もちろん、作品は大切にしたい。
大切にしなければいけない。
子どもたちの作品には命がある。

でも、命あるものはいつかなくなる。

いつかはなくなる命は、どれも尊いものだと思う。
そして、壊れたとき、また新しいものが生まれる。

壊れて、生まれて、の繰り返しがアートから生まれるエネルギーなのだろう。
くじらは立派に生ききったと思う。

くじらを描いてくれた子どもたち、
くじらをさわってくれた子どもたち、
くじらを見てくれた子どもたち、
本当にありがとう。

さよなら、くじら。

くじら2
 
ギャラリー
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プロフィール

ふじいまさこざる

阪神大震災後の子どものこころのケアが色彩楽園の始まりです。当時出会った子どもたちは「こざるー!」と呼んでくれていました(^-^;