新しい芽が顔を出し、つぼみがふくらみ、生命力あふれる春がやってきました。
春は別れの季節でもありますが、それもまた新しい世界の始まりという期待が隠れています。
特に子どもたちの成長も感じる中、久しぶりに目にしたお名前からのメールが届きました。
「藤井先生、ご無沙汰しています。
お元気におすごしでしょうか。
先生にご報告したい事がありまして。
以前教室に通わせていただいてたKですが、この度中学受験に挑戦し、合格しました。
中高大の一貫校です。
Kは小学校高学年からお友達とうまく関わりにくくなり、中学は皆と違う学校に行きたいと強く思うようになりました。
かといって、支援学校や支援級も行きたくないと意思が強く、中学受験を考え出す様になり、気になる私学中に進学相談で発達障害で支援級在籍の事をお伝えしました。
オープンスクール等行事に2年間毎回通い続けて、勉強も2年間頑張り、受験に挑戦しました。
こういうチャレンジはKにとっては初めてで合格し、努力が実り、とても喜んでいました。
高学年になってから「自分の事は自分で決めさせて」と自己決定するようになり、アトリエで培われたものだと感謝しています。
自己決定するたびにアトリエのことが頭に浮かび、この度ご報告させていただこうと思いご連絡させていただきました。
中学生活をKが非常に楽しみにしていて、小学校で放送委員をしていたのですが、中学も放送クラブに入ると意気込んでいます。努力して得た中学生活存分に楽しんでもらえたらと、私たちも全力でサポートするつもりです。
藤井先生の今後のご活躍を心より応援しております。」
発達障害があり、学習もゆっくりペースだったKくんは、お友だちのことが大好きなのに思うように遊べなかったり、状況を読むことが苦手なところもありました。
学校に行くことが辛くて仕方がない時期もありました。
それでも、見たものを記憶したりすることは得意で、自分でよく武器を作って私と戦いたがりました。
しかし、Kくんが戦っていた相手は実は私ではなく、言葉にできない苦しさとの戦いでした。
自ら目標を持って努力を続け、時には戦っていたKくんの中には本当に大きな芽が育っていたようです。その芽が十分に力を蓄えて固い土の中から出てきたのだと思うと、この嬉しさは言葉にできません。
もちろん、この喜びにはKくんの努力だけでなく、ご家族の大きな支えがあったことは間違いありません。
子どもたちが自分の中で育てているものは、本当に大きなものです。
しかし、それは今日水をやったから明日芽が出てくるといったものではありません。時には立ち止まったり、悲しくなったりすることも含めて、子どもはゆっくりとその芽を育て続けます。
時が満ち、その芽が芽吹くとき、子どもは自分自身を改めて受け止めます。
自分の力や可能性を十分に感じるときがくるのです。
アトリエで過ごした子どもたちが、こうして自分の道を切り開いて行くことは、単に絵が好きになることやうまく描けるようになることなどよりも遥かに嬉しく思います。
さあ、春です。
みんなみんな、新しい世界のスタートです。
進んだり、止まったり、迷ったり、困ったり、すべてが子どもの中に大きなものを育てます。
子どもたちの歩みに寄り添えることが本当に楽しみです。