フジイブログ

色彩楽園主宰フジイのブログです。

突き動かされる

2月のあおぞらレポート〜30年目の春へ

2月5日、色彩楽園は29周年を迎えました。
毎月公園で開催している「あおぞら色彩楽園」は、1995年の阪神・淡路大震災で被災した子どもたちのケア活動をきっかけに誕生しました。
それ以来ずっと、公園での自由なアートスペースとして続いています。

「あおぞら色彩楽園」は冬の間はスタッフ研修のため、お休みです。
2月は大掃除をしながら備品や道具のチェック、アートスペースの設営のポイントを確認し、3月の再開に向けて準備しました。
現在も使っている備品の中には発足当時からずっと役立ってくれているものもあり、大掃除をするたびにスタッフたちは感嘆の声をあげます。

「こうして、きちんとメインテナンスしているからこそ長持ちしてるんですね」
「そりゃ、だって、ここにあるものは全部募金で買ったんだもん。大事に使うのは当たり前」

「あおぞら色彩楽園」は募金により開催しています。
震災から数年が過ぎるころまでは募金で協力していただくことは考えていませんでしたが、20年以上前のある日、一人の男の子が「募金します!」と言ってくれました。
手には100円玉を握りしめています。
「どうしたものか」と思いましたが、お礼を言って受け取りました。
その男の子以外にも何人かの子どもが「募金です」と言ってくれました。

そのことをきっかけに、「あおぞら募金」が誕生しました。
毎月公園に持ち込む絵の具や画用紙、ねんど、その他必要なものは募金で購入しています。
募金以外にも、パレット代わりの食品トレイや古タオル、工作材料なども多くの方々にご協力いたいだいていて、もう何年も前に卒業したアトリエOBから「持っていきます」と連絡をいただくこともしばしばです。

こうして多くの方々のお力で活動を続けているわけですが、阪神・淡路大震災は発災後約2年間で延約180万人のボランティアが被災地に関わったと言われ、1995年はボランティア元年と呼ばれました。
今では自然災害等が起きたり、大きなイベントなどにも全国からボランティアが集まりますし、高校などでボランティア活動が必修となっている学校もあります。
29年前に神戸に集まったボランティアたちは、それまでのボランティアのイメージを大きく変えたと言っていいでしょう。
何か手伝えることはないかといてもたってもいられずに駆けつけた、何かに突き動かされて動いていたという人たちがたくさんいました。
その後各地で起きた自然災害に駆けつけたボランティアたちも同じ想いであったでしょう。
ボランティアの受け入れやルール、避難所の運営なども整備されて、その多くの手がより生かされるようになってきました。

「少しでも手伝いたい」という想いは、あれこれ考えた結果や理屈ではなく、それぞれの中に湧き上がってくるものだと思います。
その、湧き上がったものが溢れ出した結果、「ボランティア」のイメージは大きく変わりました。
今や何かあった時に手伝うことは、ごく自然なことになったと思いますし、また、その想いを受け取る側も素直に感謝を持って受け取ることが自然になってきたと思います。 

「あおぞら色彩楽園」は、ボランティアもあおぞら募金も物品の協力も多くの方々の「手伝いたい」気持ちや願いが結集したものです。
20年以上前に「募金です!」と言ってくれた男の子の親子にも「手伝いたい」気持ちがあったに違いありません。
その想いの根底には、子どもの健康な成長を願う心があると思います。
多くの願いや気持ちの積み重ねが29年間の活動につながりました。
願いや気持ちは、いつも大きな変化と新しいものを生み出します。
たくさんの心に支えられて、「あおぞら色彩楽園」は30年目の春を迎えます。

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子どもの再生力が生む大きな力

まもなく11月というころ、愛媛県西予市へ「南予教育を考える集い」に行ってきた。

昨年7月に起きた西日本豪雨で被災した子どもたちの心のケアを7ヶ月間に渡って実施したことから御縁をいただき、子どもたちの回復過程を報告すると共に、絵による子どものケアについて紹介した。
会場となった愛媛県立歴史文化博物館はとても大きな建物で、ホールは教育関係者をはじめ、たくさんの方が席を埋めてくれた。

その中には昨年の大洲の子どもたちのケアに通ってくれたボランティアスタッフKさんや、ケアプログラムに参加してくれた学童保育のスタッフなども駆けつけてくれて、改めて子どもたちの心の足跡を辿りながら作品のメッセージを噛みしめる機会となった。

また、翌日はケア活動に毎月通ってくれたAさんも、わざわざ会いに来てくれた。
Aさんは、「被災したあのときは、本当に自分が無力なことを痛感しました。
私には何もできないと思っていたときに子どもの心のケアのお手伝いという機会をいただいて、これは行かないと!と。
毎月子どもたちと接して、私自身がほぐれていったと思います。
私の方が元気にしてもらいました」

藤井先生との出会い、子供たちとの出会い、ボランティア活動、

すべてが私を育ててくれたように思います。そしてかけがえのない体験です。」と話してくれた。
 

自然災害を体験したり、自分自身が心を解いた体験をすると思わず原点に立ち返ったり、本質を考えたりすることはあると思う。
自然の力の前には、どんな言い訳も通用しないし、その大きな力を乗り越える子どもの力に触れると、「自分もごちゃごちゃ言わないで、やりたいことはやる!」とでも言うようなエネルギーが生まれる気がする。

被災した子どものケアを続けて、「私たちが子どもを元気にするために行っていたのではなく、私たちが子どもたちに元気にしてもらってたんだ」と強く感じたのは24年前。
神戸の震災から1年ほどが経ったときだ。
子どもの限りない再生力に触れて、私たちは希望を持ち、心のエネルギーを充電してもらった。
このときのことをリプレイするようなAさんの言葉は、子どもの再生力が時間も空間も超えて確実に私たちのすぐ近くにあることを改めて感じさせてくれた。

さらにAさんは、ボランティアとして活躍しただけでなく、ご自身もアートワークで自分を見つめる時間を持ち、やりたかったことを再確認したようだった。
すると、ほどなく長い間考えていた事業を立ち上げた。
これにはびっくりしたが、8ヶ月ぶりにお会いした今回は、どんどん活動の場を広げてすっかりオーナーの風格が漂っていた。

そして、Aさんは「今日は雲海が見れますよ」と言って、車で山に連れて行ってくれた。
冬になると、木々の葉が落ちて広く見渡せるらしいが、 この日はまだまだ葉が茂っていて、見渡せはしなかった。
しかし、なんとか雲海が見える場所を見つけてくれて、生まれて初めて写真でも映像でもない雲海を見た。
大洲市は盆地で、雲海は珍しくも何ともないらしい。
Aさんにとっては、おそらく日常にあることなのに、昨年私が「雲海を見てみたい」と言ったことを覚えてくれていて、大急ぎで駆けつけてくれたようだ。
雲海を見ることができるとは思ってなかったし、思わぬサプライズだった。
これには本当に感激した。
やはり、人の気持ち以上に人の心を動かすものはない。

Aさんのアトリエ ヌートはこちら 
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プロフィール

ふじいまさこざる

阪神大震災後の子どものこころのケアが色彩楽園の始まりです。当時出会った子どもたちは「こざるー!」と呼んでくれていました(^-^;